認知症予防のさんぽ道

認知症研究者・医師が発信するホットな情報

認知症と遺伝

認知症は遺伝するのでしょうか?という質問をよくされます。一般的にははっきり親から子へ遺伝する家族性アルツハイマー病はごく一部(5%以下)ですが、かなり若くして自分の親と、その兄弟姉妹、親に認知症になった人がいる場合は、可能性があります。遺伝子としては、プレセニリン1または2、アミロイド前駆体タンパク質があります。

一方、遺伝的なリスクになる遺伝子というもののなかに、脂質代謝にかかわる因子であるアポリポタンパクE(ApoE)のE4型があります。ApoEにはE2、E3、E4の3種類があり、だれもがこれらのうち2つを遺伝的に有していますが、E4を一つ持っていると、アルツハイマー認知症になるリスクが約3倍高まり、発病年齢も若くなるといわれ、二つもっていると相当にリスクが高まるといわれます。しかし、E4があっても認知症にならない人もいて、そういう意味で、危険因子とみなされます。実際、アルツハイマー認知症全体の4割程度はE4を持っていないそうです。

E4が発症リスクになるメカニズムとしては、アミロイドβの脳からの排出がE4では悪くなるからという可能性が高いのですが、このメカニズムには、いろいろな仮説があり、確定していません。

自分の親が年をとってからアルツハイマー認知症になったという場合、ある程度リスクが高まることは考えられるのですが、あまり神経質になる必要はないと思われます。