認知症予防のさんぽ道

認知症研究者・医師が発信するホットな情報

軽度認知障害(MCI)とは

前回、認知症になってしまってからでは、進行を抑えることが困難だということを書きました。それは、その時点で、脳の障害がかなり広がっているからです。では、認知症と正常の中間段階はあるのでしょうか。答えはイエスです。認知症の経過を考えた場合、正常から急に短期間で認知症になることは普通はありません。正常の時期の後、認知症ではないが、物憶えが悪いとか仕事の能率が悪いとかそういう時期があって、次第に症状の程度が強くなってきて認知症へと移行します。このような経過の中で、正常と認知症の間で、日常生活に支障はほとんどないが、正常とはいえないという状態を「軽度認知障害」と呼んでいます。英語の、mild cognitive impairment を略して「MCI」ということも多いです。

さて、MCIの段階なら、認知症になることを防げるのか ということが大きな問題です。この問いにはっきり答えることは難しいのですが、脳の中で、どういうことが起きているのかということを考えた場合、MCI認知症では、脳の障害の程度が異なり、MCIでは障害がまだ軽いものだといえると思います。ですから、MCIの段階で診断がつけば、いろいろな方策で、認知症に進むことを防げる見込みがあります。ただし、MCIの診断は難しい面があるので、しっかりした専門の病院、診療所でみてもらう必要があります。

MCIと一口にいっても、脳の状態は同じではなく、異なっていることがわかっています。次回には、そのことにふれたいと思います。